高野 真維[執筆] 7:00

カタログギフトのリーディングカンパニーであるリンベルのEC事業が急成長している。EC事業を管掌するのは、2006年からデジタル戦略を一手に担ってきた大川和弘執行役員。コロナ禍のフォーマルギフトの落ち込みという業界の逆風を乗り越え、近年はEC売上高は4年で2.4倍に成長した。ニーズに合わせたギフト販路の拡張、それに伴うDX化、当日出荷を可能にした自社物流の強化など、大川氏の革新的な取り組みを聞いた。

リンベル株式会社 執行役員 EC統括部 本部長 大川和弘氏

リンベル 執行役員 EC統括部 本部長 大川和弘氏。デジタルマーケティング・システム構築・商品開発の全領域を管掌。2006年入社以来、リンベルのデジタル戦略を一手に担い続ける。ECサイトの立ち上げから、他社とのギフト通販ビジネスを牽引(けんいん)している。デジタルギフトの波を捉え、株主優待やポイント交換事業などのシステム責任者として、大規模プロジェクトを成功に導いた。自治体ビジネスの基盤となる「スマートギフト」では「選べる」「足せる」自由なポイント交換システムを構築し、業界のスタンダードを刷新。2024年、SNSギフト「ギフトリスト」をリーダーとしてサービスインさせ、ギフト体験をデジタル時代へと進化させた。

大川氏が受賞者の1人として登壇! 11月6日(木)、第3回「ネットショップ担当者アワード」授賞式を開催します!

東京・赤坂インターシティコンファレンスにて14時25分から開会。参加無料(事前登録制)です。ふるってご参加ください!

★第3回授賞式・受賞者の詳細はこちら:https://netshop.impress.co.jp/award/2025/ceremony

リンベルECの成長を支える大川氏のデジタル戦略

――伝統的なカタログギフトの枠を超え、リンベルは昨今、ギフトのデジタル変革(DX)を推進している。EC事業における近年の実績を教えてほしい。

リンベル大川氏(以下、大川氏)EC事業の売上高は、2024年2月期は2020年2月期比で2.4倍の規模に成長した。リンベル本体以外にも、ハースト婦人画報社と運営しているECサイト「婦人画報のお取り寄せ」の売上高も共同事業として成長している。

法人のギフトニーズをとらえる「ギフトリスト」

――コロナ禍では一般的に、冠婚葬祭のイベントを中止、縮小する傾向があった。業界全体では現在、中元、歳暮、内祝いといったフォーマルギフト市場が縮小傾向にあるなかで、リンベルのEC事業が驚異的な成長を遂げた背景には何があるか。

大川氏:業界全体の逆風があるなかでECが成長しているのは、一重にデジタル基盤の強化と、ニーズに合わせた迅速なサービス拡張に尽きる。特に、従来のカタログギフトの枠を超えたデジタルカタログギフトの開発、それを支える強固なシステムが重要だ。

――具体的にはどのようなギフトサービスか。

大川氏:近年では、2024年にSNSギフト「ギフトリスト」の提供を開始。「ギフトリスト」は、デジタルカタログの波を捉え、SNSを通じてカジュアルにギフトを贈るという新しいニーズに対応するサービスだ。フォーマルギフトにとらわれず、気軽な贈り物を促す新たな贈答品コンテンツとして確立した。

贈る側が相手に選んでもらえるギフトアイテムを自由に組み合わせ、リスト化して贈呈することが可能。既存のデジタルカタログギフトをそのまま贈ることもできる。

企画からわずか1年でリリースを実現し、現在は利用者の7割が法人。「ちょっとした感謝やインセンティブをデジタルで贈る」という新たな法人ニーズを捉えることができていると感じている。

法人ギフトの場合、重要な部分としてはスピード。従来は都度開発担当に依頼をして見積もりをして開発する――というステップがあったものが、すべて営業で完結できるようにした。このことが大きな成功の鍵になっている。

カジュアルにギフトを贈りやすい「ギフトリスト」
カジュアルにギフトを贈りやすい「ギフトリスト」

「ギフトリスト」の利用イメージ

大川氏:従前、ギフト業界では「デジタルの取り組み」と言えば、紙のカタログギフトをオンライン化したデジタルカタログが主流だった。リンベルでは、法人からのカスタマイズニーズに応えること、Webならではの魅力的なコンテンツを作ることを掲げてギフト生成サービス「ギフトリスト」を開発。カスタマイズのニーズに応えることができる点が引き合いの増加につながっている。

ポイント交換型の「スマートギフト」

――リンベルのECサービスをさかのぼると、大川氏が開発したポイント交換型のギフトシステム「リンベル スマートギフト」がDX化に拍車をかけた。サービスの特長は。

大川氏:「リンベル スマートギフト」は、贈り主の予算に合わせたポイント数のカードと、全カード共通のカタログをセットで贈るギフト。個人も法人も贈り手になれる。2016年に構築し、サービスの提供を始めた。

特長は、選べるギフトを「分ける」、「足せる」、「加算できる」自由なポイント交換を可能にしていること。利用いただいている企業の福利厚生やポイント交換ビジネス、株主優待品、自治体ビジネスの基盤となり、リンベルにとっても安定的な収益源の1つとなっている。

「リンベル スマートギフト」のイメージ。取扱商品は、雑貨、体験、グルメ、商品券、ギフトカードなどさまざま。カタログと交換専用サイト合わせて1万点以上をラインアップしている。受け取った人は、贈られたポイントを自由に使い、ほしい品を好きな時に選べる
「リンベル スマートギフト」のイメージ。取扱商品は、雑貨、体験、グルメ、商品券、ギフトカードなどさまざま。カタログと交換専用サイト合わせて1万点以上をラインアップしている。受け取った人は、贈られたポイントを自由に使い、ほしい品を好きな時に選べる

大川氏:このように、既存のギフトスタイルにとらわれない商品開発と強固なデジタルインフラが、EC事業を継続的に成長させる土台となっている。

多角化したチャネルでサービスを拡張

――toCだけでなく、法人向けのギフトサービスや、他社と協業している「婦人画報のお取り寄せ」の運営など、さまざまなチャネルでEC事業を展開している。多角化戦略の狙いはどこにあるのか。

大川氏:カタログギフトという伝統的なチャネルの信用を生かしつつ、新しい市場に切り込んでいく、これが多角化の狙いであり、リンベルの成長の鍵となっている。

縮小するフォーマル市場にしがみつくのではなく、法人向けのデジタルギフト、カジュアルギフトへのシフト、そして百貨店とのコラボレーションによって、次々と販路を加え、ニーズに合わせてサービスを拡張していることが大きい。

「婦人画報のお取り寄せ」は、ハースト婦人画報社の持つブランド力と信頼性をECに持ち込み、高級感と品質を担保したままオンライン市場を開拓できた。

月次ベースでEC売上2ケタ成長の物流改革

――ECの成長を支えるために、システム構築以外で注力したインフラ面での取り組みはあるか。

大川氏2024年に実施した自社物流体制の強化が、EC売上を押し上げる強力なドライバーになった。EC専用の物流センターを新たに設立した結果、それまで最短で翌日出荷だったEC商品が、当日出荷可できる体制に変わったのだ。

専用物流にしたことで、物流社員のモチベーションが上がり効率もさらにアップした。毎週MTGをして問題解決、レビュー共有をして感謝を伝えるなど、細かい改善をスピード感を持って実施していることで満足度も上がっている。

納期のスピードアップは、特にECプラットフォームへの出店において、顧客満足度や売り上げに直結する。物流インフラの改善がEC売上を押し上げる要因となり、2026年2月期は、EC売上高が月次ベースで2ケタ増で伸びている(2025年7月現在)。

大川氏が受賞者の1人として登壇! 11月6日(木)、第3回「ネットショップ担当者アワード」授賞式を開催します!

東京・赤坂インターシティコンファレンスにて14時25分から開会。参加無料(事前登録制)です。ふるってご参加ください!

★第3回授賞式・受賞者の詳細はこちら:https://netshop.impress.co.jp/award/2025/ceremony

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