渡辺 淳子 7:00
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企業間取引のデジタル化が進み、多様な業界で業務効率化やコスト削減が求められている。しかし、商品検索の難しさや複雑な価格設定など、BtoB-ECサイトには特有の課題が存在する。ジーニーの南部夕夏子氏と齊木俊太郎氏が、BtoB-ECサイトのCVR(コンバージョン率)向上と顧客満足度アップを実現し、これらの課題を解決するサイト設計手法を解説する。

ジーニーの南部夕夏子氏と齊木俊太郎氏

BtoB-EC市場の動向と課題

企業間取引では長年、受発注においてファックスや電話などのアナログ手段が一般的で、デジタル化が遅れていると言われてきた。しかし、コロナ禍以降、デジタル化や自動化が急速に進み、業務効率の向上、コスト削減への期待が高まっている。

BtoB-EC市場においてもEC化率が年々高まり、2023年には取引全体に対するEC化率は40.0%、市場規模は約465兆円と拡大を続けている

BtoB-EC市場の動向
BtoB-EC市場の動向
出典:「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」経済産業省・2024年9月25日発表

BtoB-EC市場規模が拡大するなか、新たな課題も見えてきている。南部氏は企業規模によって、その内容には差異があると指摘する。

  • 大企業の課題……すでにシステム導入をおこなっているケースが多く、基幹システムとの接続が難しい。また、多様な取引先への対応やセキュリティ面での脆弱性チェックなども課題となっている
  • ミドル企業の課題……コスト面でシステム導入のハードルが大企業より高いことが多い。また、担当者のITリテラシーにばらつきがあり、知識の標準化が課題
  • 中小企業の課題……そもそもシステムが整っていない場合が多く、ITインフラを整備するところから始めなくてはならず、人員コストもかかる。初期投資に対して、業務効率化、売上拡大の程度などを試算し、さまざまな制約のなかで次の一手を探す必要がある
ジーニー CX統括本部 SEARCH事業部 営業部 マーケティンググループ リーダー 南部夕夏子氏
ジーニー CX統括本部 SEARCH事業部 営業部 マーケティンググループ リーダー 南部夕夏子氏

業種で異なるBtoB-ECの課題

以下の図のように、BtoB-ECサイトでは業界によってさまざまな課題がある。齊木氏は業界別の課題について次のように説明する。

BtoB-ECの業界別課題
BtoB-ECの業界別課題

業界によって課題や特性は異なる。製造業は多品目で大量の商品を扱うため、標準のECシステムでは対応できない場合がある。また、卸・流通業では、大量注文や多様な顧客対応が課題となるが、顧客ごとに卸価格が変わるため、販売価格への対応、管理が難しい。実店舗を持つ事業では、ECと実店舗の在庫をリアルタイムで連携させることも課題になる。(齊木氏)

ジーニー CX統括本部 SEARCH事業部 営業部 アカウントエグゼクティブグループ リーダー 齊木俊太郎氏
ジーニー CX統括本部 SEARCH事業部 営業部 アカウントエグゼクティブグループ リーダー 齊木俊太郎氏

多様な課題があるなかで、齊木氏がさまざまなECサイトを支援していてよくあがるのが、次の3点だという。

  1. 検索しても該当商品が表示されない
  2. 商品数が多くて、目的の商品が探しにくい
  3. 卸価格への対応ができず、販売価格の管理ができていない

その結果、EC上で購買が完結できず問い合わせが発生し、対応の手間やコストの増加につながる

BtoB-ECの課題を解決するサイト設計方法の成功事例

上にあげた3つの課題のうち、1.と2.を解決するには「商品検索機能の強化」が重要になる。その点に注目しつつ、南部氏と齊木氏は、課題を解決するサイト設計の方法について、ジーニーが関わった事例をベースに解説した。

サイト全体のCV数が137.5%に向上した、宮地電機の「電材ネット」

宮地電機は、電気設備機器・電気工事材料の販売を行う企業。電気工事店向けのECサイト「電材ネット(https://www.denzai-net.jp/)」を運営しており、「電材ネットのCVR(コンバージョン率)を上げたい」と考えてジーニーに改善を依頼した。サイトを調べてみると、次のような課題があることがわかった。

  • 商品名検索では結果が多すぎるか、ゼロ件となってしまう
  • 型番検索に対応していないため、ユーザーは求める商品を見つけることが難しい

その解決策として、ジーニーは次のような2つのアプローチを採用した。

  • 検索窓に商品名、型番に対応した画像付きサジェストを実装し、検索機能を強化
  • 商品ページに「この商品を見た人が見ている商品」のレコメンド表示を追加。購入しないユーザーの離脱を最小化した

検索窓にサジェストを追加することで、型番の検索も可能にした。商品画像で訴求することもできるため、ほしい商材のイメージが湧いているユーザーであれば、検索窓からクリック1つで商品詳細ページへ移動できるようになった。(齊木氏)

電材ネット」の改善例
「電材ネット」の改善例。検索窓にサジェストを追加し、商品ページとカートページにレコメンドを追加することで、実店舗に近い接客とスムーズな購買体験の実現をめざした

この結果、サイト全体のCV数は導入後137%に伸長。なお、レコメンドは当初商品ページのみに設置していたが、一定の効果が得られたため、カートページにも追加したという。

目的の商品を見つけやすいサイトを実現した、清和の「パッケージ通販」

清和は、包装資材の製造販売を手がける会社で、包装資材のECサイト「パッケージ通販(https://www.seiwa-p.co.jp/shop/)」を運営している。しかし検索導線の最適化ができておらず、サイトが使いにくいという課題があった。そこで包装資材という商材の特性を考え、詳細なサイズ(長短辺/奥行き/深さ)による絞り込みを実装した。

「パッケージ通販」の改善例
「パッケージ通販」の改善例。型番、フリーワードでの検索に対応し、さらに細かな条件で絞り込めることで、どのようなユーザーにとっても「探しやすい」サイトを実現した

型番の検索窓とフリーワードの検索窓を分け、ユーザーが探しやすい方で検索できるようにしている。また、絞り込みに関しても、長辺、短辺、奥行きといった細かな区分を選べるようにした。商品点数が多かったり、カテゴリーをたくさん作っていたりするサイトでは非常に効果的だ。(南部氏)

一度の検索でほしい情報にたどり着けるサイトを実現した、アネスト岩田の「製品情報サイト」

アネスト岩田は、圧縮機、真空機器、塗装機器などの製造販売を手がける会社で、オンラインショップだけでなく「製品情報サイト(https://www.anest-iwata.co.jp/)」を運営している。課題は、ユーザーが目的の情報を見つけにくいということだった。そこで、次の対策を施した。

  • 製品情報との連携で、検索結果に製品にひもづくスペック情報を表示
  • 製品・カタログ・CAD・取扱説明書の絞り込み項目を作成し、求める情報へスピーディにたどり着ける機能を実装
アネスト岩田の製品情報サイト
アネスト岩田の製品情報サイト。一度の検索で必要な情報にたどり着けるサイトを実現

ユーザーが検索窓にキーワードを1つ入れると、製品の情報、カタログの情報、CADの情報が連携して表示される。最短のアクションで、ユーザーが求めているコンテンツを閲覧できるUIを実現した。(齊木氏)

どのようなニーズでサイトを訪れた人であっても、サイトを離脱することなく、知りたい情報を得ることができる仕組みを実装した。(南部氏)

求める情報にスムーズにアクセスできるようにし、問い合わせ数を削減した「デジタル機器メーカーE社」

デジタル機器の開発、製造、販売を行っているデジタル機器メーカーE社は、数十万もの商品を扱うECサイトを運営している。ユーザーからCS部門に「商品が見つからない」との問い合わせが発生し、対応に工数がかかるという課題を抱えていた。そこで、CS部門が蓄積していた問い合わせワードをAI辞書に組み込むことで、検索精度を向上させるという対策を講じた。

また、E社には、顧客ごとの価格設定や契約条件の違いをサイトに反映できていないという課題もあったが、顧客ごとに商品、価格の出し分けを実現することで、ユーザーがスムーズに購入できるサイトにできたという。

デジタル機器メーカーE社の事例
デジタル機器メーカーE社の事例。AI辞書を活用し検索精度を向上させた

BtoB-EC向けサービス「GENIEE SEARCH for BtoB EC」

各事例で実施した対策は、ジーニーが提供する「GENIEE SEARCH for BtoB EC」を用いている。「GENIEE SEARCH for BtoB EC」は、商品を探しやすくする機能や、アップセル・クロスセルを提案する機能をまとめたBtoB-EC向けのパッケージサービスだ。「GENIEE SEARCH for BtoB EC」の主な機能は次のとおり。

表記ゆれに自動対応する機能

BtoB-ECサイトでよく行われる品番検索では、たとえば「1 2 3」と「123」のように文字の間にスペースがあるかないかによって、違う商品が表示されたり商品が出てこなかったりする。また、ひらがなかカタカナか、半角か全角かによって、商品が出てこない場合もある。こうした表記ゆれを、商品データに依存せず、検索エンジン側で自動補正、自動認識する。

マルチ検索機能

購入予定の型番が決まっていたり、大量購入を希望していたりするユーザー向けに、複数の型番を一括検索できるようにし、検索結果画面で対象型番をすべて表示する。

BtoB特化型サジェスト機能

BtoB-ECでは、型番や商品名が長いことが珍しくない。そのため、検索窓に候補となるキーワードをサジェストとして表示する機能が有効だ。サジェスト機能は、「キーワード」「シリーズ名」「型番」の3種類の検索語に対応している。

3種類の検索語に対応しているBtoB特化型サジェスト機能
3種類の検索語に対応しているBtoB特化型サジェスト機能

AI辞書機能

ユーザーの検索ログや問い合わせ情報などをAIが学習し、検索されるキーワードに合わせて、同義語、類語、略語の辞書を作成する。

レコメンド機能

商品詳細ページやカートページにレコメンドを表示し、離脱率の改善や、アップセル・クロスセルを促進する機能。ユーザーが閲覧した商品と関連する商品のレコメンドや、閲覧や購買といったユーザーの行動と関連する商品のレコメンドが可能。また、閲覧行動履歴をもとにIDベースで顧客ニーズを把握し、1人ひとりに合わせたレコメンドも行える

レコメンド機能。離脱率の改善や、アップセル・クロスセルの促進を期待できる
レコメンド機能。離脱率の改善や、アップセル・クロスセルの促進を期待できる

AIハッシュタグ機能

AIが商品情報や画像、レビューなどから自動でハッシュタグを生成・表示し、ハッシュタグ検索を可能にする機能。商材を訴求するハッシュタグを生成することで、その商材を顕在的、潜在的なニーズを持つ事業者に見つけてもらいやすくなる

ユーザーの目的に沿った情報提供ができていなければ、問い合わせ対応が増大する。問い合わせ対応工数の削減には、BtoB-ECならではの型番の検索や、価格の出し分けへの対応が不可欠だ。高精度の検索機能と的確な商品提案によって、運用の効率化と売上最大化を実現してほしい。(南部氏)

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