Digital Commerce 360[転載元] 9/18 8:00

Ralph Lauren(ラルフローレン)が米国モバイルアプリで新たに提供を始めたAIアシスタントは、ユーザーにオンライン上でAIと“会話”をしているようなショッピング体験を提供します。AIアシスタントはRalph LaurenがMicrosoftの協力を得て開発。AIを活用した消費者向けのサービスはRalph Laurenでは初めての取り組みです。

AIアシスタント「Ask Ralph」をアプリに実装

D2C戦略にAIを取り入れているRalph Laurenは9月9日、AIを活用した新たなバーチャルショッピングアシスタント「Ask Ralph(アスク ラルフ)」を発表しました。米国国内で現在、iOSまたはAndroidの「Ralph Lauren」モバイルアプリを使うユーザーが利用できます。

ユーザーは「Ask Ralph」に「コンサートに何を着ていけばいい?」「夏の結婚式参列するときはどのような服装が良い?」といったスタイリングの質問を自由に入力、その質問に対するコーディネートの提案、スタイリングのアドバイスなどを即座に受け取ることができます

「Ask Ralph」の利用イメージ
「Ask Ralph」の利用イメージ

「Ask Ralph」はMicrosoftの協力を得て「Azure OpenAIプラットフォーム」を使い開発しました。「Azure OpenAIプラットフォーム」は、Microsoftが提供するクラウドサービス「Microsoft Azure」で、OpenAIが開発した生成AIのモデルをAPI経由で使用できるサービスです。

「Ask Ralph」は大規模言語モデル(LLMs)を活用、ユーザーからの問いかけ(プロンプト)を解釈し、ユーザーに適した提案を返します。提案は「Ralph Lauren」のブランドイメージを損なわない内容に設計されているそうです。

「Ralph Lauren」の特長(動画はMicrosoftのYouTubeアカウントから追加)

「Ask Ralph」に搭載したAIアシスタントに関する取り組みは、Ralph LaurenとMicrosoftの長年に渡るパートナーシップをさらに深めるものです。両社は2000年、ファッション業界でも初期のECプラットフォームの1つである「Polo.com」をローンチ。その後「Polo.com」は「RalphLauren.com」と名称を変更し、現在もRalph Laurenの主要なオンライン旗艦店(フラッグシップサイト)となっています。

現在の「RalphLauren.com」(画像はサイトから追加)
現在の「RalphLauren.com」(画像はサイトから追加)

「Ask Ralph」の立ち上げは、Ralph Laurenがデジタルトランスフォーメーション戦略を加速させている時期に実施しました。

Ralph Laurenは2025年5月に、グローバルチーフデジタルオフィサーとしてナヴィーン・セシュアドリ氏を任命。セシュアドリ氏 は、パーソナライゼーション、AI、プラットフォームの近代化、販売チャネル横断型のコマースなどの領域を管掌しています。

Ralph Laurenによるセシュアドリ氏の任命は、2025年度を最終年度とする3か年戦略「Next Great Chapter: Accelerate」の一環で、高級ブランドとしてのレガシーを維持しつつ、デジタル変革を通じた持続可能な成長を追求することが目的です。

テクノロジーを通じてカスタマージャーニーを再構築

Ralph Laurenのチーフ・ブランディング&イノベーション・オフィサーであるデイヴィッド・ローレン氏は、「Ask Ralph」 の立ち上げは「テクノロジーを通じてカスタマージャーニーを再構築する」というRalph Laurenの長期的な取り組みにおける新たなマイルストーンだと説明しています。

Ralph Laurenは25年前、ファッション業界でいち早いECプラットフォームの一つをMicrosoftと共に立ち上げました。今日また、次世代のショッピング体験を再定義しています。(デイヴィッド・ローレン氏)

創業者ラルフ・ローレン氏の次男であるデイヴィッド・ローレン氏は、自社ブランドにこれまでも新たなテクノロジーを取り入れてきました。

アパレル業界で、「Ralph Lauren」はQRコードタグを商品ラベルに用いた初期のブランドの1つであり、AR、タッチスクリーンディスプレイ、その他対話型の技術も過去に実験しています。デイヴィッド・ローレン氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材で「昨今、Ralph Laurenは会社全体でAIの活用法を学ぶことに注力しています」と話しています。

「Ask Ralph」はパーソナライズを深化

デイヴィッド・ローレン氏によると、「Ask Ralph」は、Ralph Laurenにとって、消費者向けの初めてのAI活用サービスです。

「Ask Ralph」「Polo Ralph Lauren」のメンズ、ウィメンズのコレクションのアイテムにフォーカスしています。

ユーザーが「メンズ向けのネイビーブルーのブレザーをどのようにスタイリングすれば良い?」といった質問をすると、AIツールはその問いに対し、スタイルのアドバイスやイメージ、また提案されたスタイリングに含まれる個々のファッションアイテムへの購入ボタンも表示します。

ユーザーがさらに具体的な質問をすることで結果を絞り込むこともでき、在庫の有無に基づいて提案するよう設計しています。

「Ask Ralph」は個々の商品への購入ボタンも表示する(画像はRalph Laurenのコーポレートサイトから追加)
「Ask Ralph」は個々の商品への購入ボタンも表示する(画像はRalph Laurenのコーポレートサイトから追加)

「Ask Ralph」は時間と共によりパーソナライズされていくようになっており、ユーザーの利用の仕方に応じて提案内容が順応していく予定です。

計画しているアップデートには、パーソナライゼーションの深化、新機能の追加、Ralph Laurenが展開するブランドのより多くの商品の展開、そしてRalph Laurenの市場拡大が含まれています。

AIへの投資を加速、サプライチェーンの最適化も計画

Ralph Laurenは、カスタマーエクスペリエンスと社内業務の両方を強化するために、AIへの投資を継続しています。これには、顧客1人ひとりに対するよりパーソナルなマーケティング、デジタルツールのさらなる活用、サプライチェーンの最適化が含まれるそうです。

パトリス・ルーヴェCEOは、Ralph Laurenの2025年4-6月期(第1四半期)の決算説明会で、AI駆動型の予測購買プログラムの試験運用を、2026年度には自社の主要なブランドに拡大する計画であることを説明しました。

予測購買プログラムは、サイズの在庫をより確実に用意し、売れ筋商品の在庫を最適化することを目的としています。Ralph Laurenはアジア圏と欧州圏ですでに試験運用を成功させています。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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