
Pinterestと急成長の米化粧品ブランドが始めたAI活用のバーチャルカラー分析+商品提案ツールとは?

Pinterestが運営する写真共有サービス「Pinterest」が、さらに進化しています。Z世代の消費者に人気の美容ブランド「e.l.f. Cosmetics」を手がける米国の化粧品事業者と協業し、ユーザーにパーソナルな美容体験を提供。AIを活用した診断ツールを通じて、1人ひとりに最適な化粧品を表示し、シームレスな購買体験につなげる取り組みをしています。
PinterestがZ世代向け美容ブランドと協業
Pinterestは、e.l.f. Beauty(エルフビューティー、米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』によると、2025年のe.l.f. BeautyのEC売上高は1億84万ドルに達すると予測)との協業を通じ、消費者向けの新たなデジタルツール「color e.l.f.nalysis」を立ち上げ、新たなソーシャルコマースの取り組みを始めています。
このツールを使うと、ユーザーは自分の写真をアップロードするだけで、パーソナライズされたメークアップの提案を受けられます。ツールの利用は無料。世界中どこからでも利用できます。

肌の特長を分析し、ユーザーの肌の色合いに合わせた「Pinterest」ボードを自動でカスタマイズして提供。これらのボードには、ユーザーの肌にマッチした「e.l.f.」の商品が掲載されます。クリックもしくはタップするとECサイトで商品を購入することができます。
パーソナライズ美容のニーズを深掘り
Pinterestはe.l.f. Beautyのような大手小売事業者と直接連携することで、ユーザーが商品を発見し購入できる、よりパーソナライズされたショッピングのプラットフォームとしての地位を高めています。
Pinterestの消費財担当バイスプレジデントであるケイティ・ドンブロウスキー氏はe.l.f. Beautyとの協業を報じる発表で、次のように説明しています。
過去1年間でメーク関連の検索は16億回に達し、メークに役立つ「カラーシーズン分析」のようなデジタルツールへの関心が22倍に増加していることから、消費者がパーソナライズされた美容体験を強く求めていることは明らかです。
この動きは、ソーシャルメディアが消費者の購買行動に影響し、Z世代の消費者の間で特に重要な役割を果たしているなかで起こっています。
DHLが発表した「Eコマーストレンドレポート2025」によると、世界の消費者の70%が2030年までに主にソーシャルメディアを通じて買い物をするようになると予想しています。
レポートでは、消費者の10人中7人が、バーチャル試着のようなAIを活用したよりスマートなショッピングツールを求めていることも判明しました。
DX化の技術が高まるにつれて、消費者は「実用性と楽しさを融合させた、直感的でテクノロジーを活用したショッピング体験」を求めているとDHLは解説しています。
「color e.l.f.nalysis」の特長
「color e.l.f.nalysis」は、季節の名称に当てはめたカラー分析に基づいて構築されています。これは、色相、明度、彩度などの特長に基づいて、個人を暖色系または寒色系の「シーズン」に分類する方法です。ユーザが写真をアップロードすると、ツールが顔の特長を分析し、「ウィンター」「スプリング」などに肌のカラーを決定します。
その結果に基づいて、ユーザー1人ひとりに合わせて作られた「Pinterest」のボードを表示。そして、ユーザーのカラープロファイルにマッチする「e.l.f.」商品のなかで、購入できる商品が厳選されてまとめられた、画像や動画のリストがボードに表示されます。
e.l.f. Beautyの統合マーケティングコミュニケーション担当最高責任者であるパトリック・オキーフ氏は、ニュースリリースで次のようにコメントしています。
「Pinterest」と協力し、カラー診断の専門家と共同で開発した「color e.l.f.nalysis」は、人間の血の通ったサービスを補完するものです。デジタルツールが人の手に置き換わるものではありません。「color e.l.f.nalysis」は、ユーザーが自分に合うものを見つけ、数タップで自身に最適な「e.l.f.」商品にたどり着くことができる、スマートかつシームレスな楽しい体験を提供します。(e.l.f. Beauty 統合マーケティングコミュニケーション担当最高責任者 パトリック・オキーフ氏)
ユーザー行動を分析
Pinterestは、プラットフォーム上の検索、保存、ショッピング行動を分析し、ボードの商品キュレーションに活用しています。
e.l.f. Beautyのニュースリリースによると、このツールを実現するためにe.l.f. BeautyはPinterestのインサイトチームと協力し、シーズンごとのトレンドを把握しました。Pinterestの自社データによると、2024年5月から2025年5月にかけて、「トゥルーサマーメイクアップ」という検索が前年比で23%増え、「スプリングカラーパレット分析」の検索も同様に30%増えたそうです。
e.l.f. Beautyの広報担当者によると、ユーザーは「color e.l.f.nalysis」を専用のマイクロサイトを通じて世界中で利用でき、e.l.f. Beautyは期間限定ではなく長期的に利用できるとしてツールとして「color e.l.f.nalysis」を提供しています。
e.l.f. Beautyはまた、ソーシャルを活用したクリエイティブエージェンシーであるMovement Strategyとも提携しました。e.l.f. Beautyによると、Movement Strategyは、リアルタイムのデータやプラットフォーム上での利用者の動きを分析して、ブランド戦略を立て、人々の心をつかむような魅力的なコンテンツを制作し、さらに、世の中に新しい流行や文化を生み出すような強い影響力を持つインフルエンサーと連携しています。
Pinterestが展開する、ユーザーの注目をひく広告コンテンツ
e.l.f. BeautyはPinterestのクリエイターパートナーシップパッケージも利用しています。これにより、e.l.f. Beautyと組んでいるインフルエンサーは「Pinterest」のユーザーに合わせて調整された、「Pinterest」ファーストのコンテンツを制作できます。
PinterestのWebサイトによると、このコンテンツは「Idea Ads(アイデア広告)」という形で宣伝されます。これは、普通の投稿のように見えますが、実は広告で、複数ページにわたって動画や画像などを使い、ユーザーの興味を強く引きつける意図で設計されています。
このコンテンツには、Pinterestの最新のコラージュ形式も採用されており、ダイナミックな切り抜きスタイルのピンデザインが特徴です。Pinterestによると、コラージュは2023年のリリース以来、Z世代ユーザーの間で最もエンゲージメントの高いコンテンツタイプの一つになっています。
2025年6月上旬、PinterestはAIを活用した機能「オートコラージュ」を発表しました。これは、広告主の商品カタログから何千もの購入可能なコラージュを自動的に生成するものです。Pinterestによると、初期のテストでは、ユーザーがオートコラージュを保存する割合は、標準的な商品ピンの2倍でした。

EC売上高28%増で成長中のe.l.f. Beauty
e.l.f. Beautyは、3月31日に終了した2024年度第4四半期の売上高が前年同期比4%増の3億3260万ドルだったと報告しました。2025年3月期通期では、米国およびグローバルのECと小売チャネルの両方が成長し、売上高は前期比28%増の13億1000万ドルに達しました。
決算説明会で、CEOのタラング・アミン氏は、「e.l.f. Cosmetics」が現在、米国の化粧品ブランドでは販売個数1位、売上金額では2位になっていると説明しました。「『e.l.f. Cosmetics』は2025年、トップ20の化粧品ブランドのなかで、圧倒的な差で最も急速に成長しています」(アミン氏)
「e.l.f. Cosmetics」は、卸売り先の米国小売大手でも売上シェアを拡大しています。「現在、『Target』の化粧品カテゴリーの21%を占め、『Walmart』の化粧品カテゴリーでは4位から2位に上昇しました」(アミン氏)