大嶋 喜子[執筆] 8/6 6:30

ベンチャーサポートコンサルティングが実施した「法改正に伴うパート・アルバイトの雇用課題」に関する意識調査によると、回答企業の73.2%が「最低賃金の引き上げ」「103万円の壁の引き上げ」によって「経営が圧迫されている」と回答した。賃金引き上げに伴う人件費の増加分は「業務効率化(DX)」「価格転嫁の実施」で補っている企業が多い。

調査対象はPRIZMAリサーチ登録モニターのうち、パート・アルバイトを10人以上雇用している経営者1001人。調査期間は2025年4月24~26日。

過半数が最低賃金未満からの引き上げを実施

過去最大の最低賃金の引き上げ幅となった2024年の対応について聞いたところ、最も多かったのは「改定後の最低賃金を下回っていたため、賃金を引き上げた」で49.1%、続いて「改定後の最低賃金を上回っていたが、賃金を引き上げた」が38.5%、「改定後の最低賃金を上回っていたため、変更していない」が12.4%だった。

ベンチャーサポートコンサルティングは「人材確保や離職防止といった先を見据えた“攻めの人事”が一部の企業で進行していることがわかる」と解説している。

賃金引き上げに伴って行った対応
賃金引き上げに伴って行った対応

人件費の増加分への対策は「DXによる業務効率化」が最多

賃金の引き上げによる人件費の増加分の補充について、最多は「業務効率化(システム導入による業務のDX化)」で49.0%、続いて「価格転嫁の実施」が44.7%、「コスト削減(光熱費や在庫などの費用など)」が35.2%だった。

「業務効率化(DX)」が最も多かったことから、ベンチャーサポートコンサルティングは「価格転嫁やコスト削減といった外部対応よりも、社内の構造改革でコスト増を吸収しようとする傾向がうかがえる」と解説している。

賃金の引き上げによる人件費の増加分をどのように補っているか(複数回答可)
賃金の引き上げによる人件費の増加分をどのように補っているか(複数回答可)

7割超が「経営を圧迫」と回答

「最低賃金の引き上げ」や「103万円の壁の引き上げ」によって、経営は圧迫されているかを聞いたところ、「はい」が73.2%、「いいえ」が26.8%だった。

ベンチャーサポートコンサルティングは「制度の理念を支持する声が多数である一方、現場の負担感は依然として強い。制度改正を人材戦略に生かす企業もあるが、業種や企業規模によって財務面での許容度にはばらつきがあり、対応力の格差が今後の経営体力に影響する可能性もある」と言及している。

「最低賃金の引き上げ」や「103万円の壁の引き上げ」によって、経営は圧迫されているか
「最低賃金の引き上げ」や「103万円の壁の引き上げ」によって、経営は圧迫されているか

8割が「人件費は増える」と回答

103万円の壁の引き上げにより、年間の人件費(給与+社会保険料など)の負担はどの程度変化する見込みか聞いたところ、最も多かったのは「やや増加する予定」で50.7%、続いて「大幅に増加する予定」が29.4%、「変化はない」が16.9%だった。

103万円の壁の引き上げにより、年間の人件費(給与+社会保険料など)の負担はどの程度変化する見込みか
103万円の壁の引き上げにより、年間の人件費(給与+社会保険料など)の負担はどの程度変化する見込みか

「労務管理の複雑化」が最大の課題

雇用関係の法改正はどのような点に対応の難しさを感じるかを聞いたところ、「労務管理の複雑化」が最多で37.8%、続いて「従業員の希望労働時間との調節」が37.3%、「社会保険加入手続き」が31.3%、「従業員への説明と合意形成」が27.8%だった。

ベンチャーサポートコンサルティングは「法改正の理解だけでなく、実際の現場運用にまで及ぶマネジメント負担が顕在化しており、対応の実務面に課題を感じる企業が多いことがうかがえる」と推測している。

雇用関係の法改正は、どのような点に対応の難しさを感じるか(複数回答可)
雇用関係の法改正は、どのような点に対応の難しさを感じるか(複数回答可)

調査概要

  • 調査方法: PRIZMAリサーチのモニターを利用したWebアンケート方式
  • 調査対象:PRIZMAリサーチ登録モニターのうち、経営者(パート・アルバイトを10人以上雇用している方)1001人
  • 調査期間:2025年4月24日~26日
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