酒匂 雄二[執筆] 8:00

Googleは日本時間2025年6月30日に、2025年2回目となるコアアップデート「June 2025 core update」をリリースし、7月17日に「展開が完了した」とアナウンスしました。今回はそのコアアップデートについて触れたいと思います。

「あらゆる場所での検索に対する最適化」という考え方

June 2025 core update | Google Search Status Dashboard
https://status.search.google.com/incidents/riq1AuqETW46NfBCe5NT

生成AIが検索に使われることも増え、それに合わせた最適化の取り組みを指す用語が乱立している今、「新しいワードを掲げて、AI活用施策の営業を仕掛ける業者も増えている」と見聞きするようになりました。

ここ数か月でも、AI対策には下記のような同義の言葉を複数目撃しています。

  • GEO(Generative Engine Optimization)
  • AIO(AI Optimization)
  • AEO(Answer Engine Optimization/AI Engine Optimization)
  • LLMO(Large Language Model Optimization)

生成エンジン最適化、AI最適化、大規模言語モデル最適化などの用語が次々と生み出されることに、警鐘を鳴らす専門家も増えてきました。

そのなかで、「従来のSEO、検索エンジン最適化(Search Engine Optimization)を『Search Everywhere Optimization』と定義してみてはどうか」という意見にとても共感しました。

SEOはGoogle、Yahoo!、Bingといった検索エンジンプラットフォームからのアクセスを獲得する取り組みとして、もともとは定義されていました。しかし、生成AIをはじめ、YouTubeなどの各種動画、X(旧Twitter)、FacebookといったさまざまなSNSなど、あらゆる場所に最適化するという「Search Everywhere Optimization」が注目されています。

「AI時代のSEO」のファイナルアンサー? 「あらゆる場所での検索最適化」とは【SEO情報まとめ】 | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/e/2025/06/06/49465

2022年末あたりから「ChatGPT」が話題になり、今や幅広く知られ活用されるようになった生成AIですが、ユウキノインのクライアントのサイトを見ても、決して「AIだけ」の流入が増えているわけではなく、TikTok、Pinterest、Wikipediaなどからの流入増加も見て取れるようになっています。

その状況からしても「あらゆる場所での検索に対する最適化」はとても腑に落ちました。だからといって、無理にすべての場所に取り組む必要はないと思います。

たとえば当社のあるクライアントでは、InstagramとTikTokからの流入はほぼ同じなのに、GA4を見るとエンゲージメント率はTikTokが30%も高く、Xはアクセスは少ないがUGC経由での流入が多いのでエンゲージメント率はさらに高い傾向にあるなど、参照元でも違いがあります。

「◯◯が話題!」「今始めないと損をする・乗り遅れる」といった言葉にまどわされず、自社・自店とユーザー・お客さまが出会い、エンゲージメントを高めていくのにふさわしい場所を見つけ、最適化していくことが大切ではないでしょうか。

要チェック記事

マーケティング関連

子ども服の『ベベ』、悩み解決型のEC定番商品がヒット 「防汚加工」「前後ないパンツ」など人気 | 日本ネット経済新聞
https://netkeizai.com/articles/detail/15053

「ECサイトで定着する商品として開発した。子ども服ならではのすぐ汚れるという課題に対して、汚れが染み込みにくい素材で解決している。SNSの発信などで商品をきっかけにブランドを知る流れもできている」

子ども服「べべ」のEC部ゼネラルマネージャー 片岡順さんは、お互い当時所属していた企業のECで、2017年の「第9回ネットショップグランプリ」の準グランプリを受賞した仲。それから懇意にしていただいていますが、顧客のお悩み解決視点にはいつも学ぶことが多いです。

この記事は「Yahoo!ニュース」にも転載されており、「自分で着たい! 前後間違ってるなんて子どもには関係ない」「親は直したくなるが、子供的には『自分で着る』ことが何よりも重要。直そうとしたら怒られる。そういうのを見守れるのはいい」といったコメントが書き込まれており、顧客のニーズ・ウォンツに突き刺さっていることが伺えます。

「ベベ」の取り組みは多くのEC事業者のヒントになるかも?

【25年6月日本でも開始】TikTok Shopとは?注目される背景や海外での先行事例、具体的な開始手順を紹介 | キーワードマーケティング
https://www.kwm.co.jp/blog/tiktok-shop/

2025年6月30日に日本でもスタートした「TikTok Shop」。経済系のテレビニュースでも「ゲームチェンジャーとなるか?」と報じられるなど注目を浴び、パートナー企業の株価が続伸するなど話題性に欠かないですね。

私も実際に「TikTok Shop」の管理画面「セラーセンター」にログインしてみたのですが、とてもシンプルでわかりやすいUIだと感じました。連携アプリには国内外の主要カートの選択肢があり、特に「Shopify」対応のアプリは見た時点で14種も登録されていることには驚きました。国内のカートシステムも追従してくるとのことなので、楽しみです。

一方で、「『TikTok Shop』では、1件の注文につき売り上げの7%の手数料が発生」という手数料に、ハードルの高さを感じている事業者の話も聞きます。他のサービス同様、黎明期のしばらくの間は、有象無象でカオスになるのではないかと感じていますが、仕組みや導入事例はフォローしていきたいですね。

先月の中林さんの記事で、futureshopのYouTubeを紹介していました。

もうすぐ開始される「TikTok Shop」、日本ではどうなの?! 現段階の情報で徹底分析!【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/14211

「結構東南アジアの方では、売れているというのは聞きますね。ただ東南アジア以外に――イギリスはそんなに売れていないみたいな話も聞いたりするので。簡単に売れるかというとそうでもないというのはあるなという感じですね。」(futureshop 安原氏)

私も色々情報を収集しているのですが、安原さんと近いことを感じており、娯楽の多い都市部での普及に課題を感じます。そのなかでも「ふるさと納税は相性がいいのではないか」と思う部分があり、「私が獲った」「私が栽培した」と生産者が直接、返礼品を紹介するライブコマースは刺さりそうな気もします。

また、YouTubeの案件のように再生数が視標となり得ていた部分から実売が可視化されるので、そうした案件化は増えそうな気もします。テレビショッピングの名物販売員やカリスマ店員のような人が誕生し、YouTuberの事務所がそうした販売員事務所へ転換したりして? とも。

既にインフルエンサーの多い美容やアパレルは先行しそうな気配がしますが、カートやモールの連携を見ながら情報収集していきたいと思います。

SEO関連

2025年6月展開Googleコアアップデートの所感【June 2025 core update】 | ユウキノイン
https://yuhkinoine.com/blog/20250706coreupdate/

当社のクライアントを中心に、7月17日に完了したGoogleのコアアップデート開始から1週間ほどの動きをまとめています。やはり、意識すべきことは「あらゆる場所での検索を最適化」だと思います。

Etude : SearchGPT abandonne (discrètement) Bing et passe chez Google(SearchGPT、こっそりBingをやめてGoogleに乗り換え) | SEO, Data & Growth
https://newsletter.alekseo.com/p/searchgpt-bing-google

「ChatGPT」の検索「ChatGPT search」が、主要な外部検索エンジンをBingからGoogleに移行しているのではないかというレポート。「ChtaGPT」とBingの一致率が30%に対してGoogleとの一致率が90%になるなど、複数の状況証拠からGoogleに置き換わっているのではないか、というものですが、これが本当であれば、王道のSEOを継続していくことこそ重要であると言えそうですね。

トップ大学の論文に潜む“隠しコマンド”の衝撃!学術界の信頼はどこへ? | Modern-g
https://modern-g.com/ai250703#google_vignette

「人間には見えない形でAIへの“好意的な評価を促す”隠しテキストを含んでいた」

見えない大きさの文字や「白背景に白文字」はEC黎明期にモールでも多く見られましたが、そうした原始的な手法によって、AIやその情報を手に入れた人を騙そうとしているコンテンツの存在も報告されています。

AIに対して不正な指示を入力し、意図しない動作を引き起こしたり、機密情報を漏洩させたりしようとする「プロンプトインジェクション」で誤った情報を資料に取り入れたり、拡散しないようにも注意したいですね。

Google検索結果の変化が加速? 1ページ目の48.8%が2年で入れ替わる時代のコンテンツ作り | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/e/2025/07/14/49667

「楽観的に考えれば、これはコンテンツの作成と更新における競争優位性がいっそう高まることを意味する。」

生成と創造は別物。着てみる、食べてみる、行ってみる、そうした体験談はAIではできないもの。スタッフの実体験や、ユーザーアンケートなど自社でしかできないことを磨いていけば、AI検索時代にも慌てることはないと考えています。

今、みなさんにお伝えしたいこと

CEO文美月プロフィール | 株式会社ロスゼロ
https://losszero.co.jp/president/

今回の記事で紹介した「べべ」の片岡さん、futureshopの安原さんは、学びを得たり情報交換をしたりする恩人でもあり仲間でもあり、ECで生きてきた私にとって過去も今も欠かすことのできない大切な存在です。そうした存在のなかでも、ECの世界に足を踏み入れた頃にこ゚縁をいただき、今も見守っていてくれる方がいます。

ヘアアクセサリーEC「リトルムーン」で、複数回「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、現在は食品ロス削減に取り組むEC「ロスゼロ」などを展開するロスゼロの文美月さんです。

この方に会っていなかったら、私はECの世界にいなかったかも。そういう意味で「ECの自分」における母であり先生。私が今こうして執筆や登壇を多くいただくきっかけの言葉をくれたのも文さんでした。

起業家としてだけではなく、情報番組のコメンテーター、大阪・関西万博の女性起業家イベントにも登壇するなど大活躍しています。そのため、年に1度会えるかどうかですが、会えた時は「元気に頑張っています」と「恥ずかしくない自分を見せられるように」という思いが、自分を支える背骨のようになっています。

「常にまわりの人に感謝しなさい」と親に教えられて育ちましたが、この教えは今も生き続けています。

このコラムをいつも読んでくださる皆さまにも、心から感謝の気持ちでいます。それではまた次回! 酒匂(さこっち)の「ネッ担ニュースまとめ」をよろしくお願いいたします。

ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

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ユウキノインは寄り添い伴走しながら中小企業・ECサイトのSEOからコンテンツマーケティング、プレスリリースやクラウドファンディングなど集客・販促・広報をお手伝いする会社です。詳しくはユウキノインのホームページをご覧ください。

Designequationは何かに特化したサポートではなく、モール・ベンダー選定や広告・CSなど各企業に合わせたカスタマイズ型の運用サポートを行っています。

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