「メルカリShops」総合3位の甲羅組に学ぶ刺さるショップ戦略。顧客傾向は「低単価」「入口商品のリピート買い」
カニなどを販売する「越前かに職人甲羅組」の伝食が、フリマアプリ「メルカリ」上のECプラットフォーム「メルカリShops」で売り上げを伸ばしている。2月には、メルカリShopsにおける優秀店舗を表彰する「メルカリShopsアワード2024」において、総合3位を受賞。「メルカリ」における「売上金」の使い道として、同社が扱う海産物の需要が高まっているようだ。
総合3位の「甲羅組」が築く、売り上げ伸長の仕組み
売上金と「交換」する需要を捉えて成功
同社がメルカリShopsに出店したのは2022年10月。もともと「メルカリ」で不用品を販売する機会の多かった、通信販売部通販運営企画課・福地志穂美課長代理の発案だという。

「『メルカリ』で何か売れると『売上金はどうしようか』となる。銀行口座に振り込むと手数料がかかってしまうわけで、私自身は貯まった売上金を『メルカリ』での購入に充てていた。他にもそういう人は多いだろうから、甲羅組としてメルカリShopsに出店すれば、購入するというよりも、売上金と『交換』する需要が生まれるのではないかと考えた」と振り返る。まだ食品を販売するEC事業者の出店が多くなかったことも後押しとなったという。
「新規顧客を獲得したいのはもちろんだが、いつもは楽天市場やヤフーショッピングで購入しているユーザーでも、『メルカリ』の売上金の使い道に困ったら1つの経済圏にこだわらず、当社の商品と『交換』できるような仕組みが作りたかった。たとえば、ちょっと値段高くて手出なかったカニがあったとして、大掃除を頑張って不用品が『メルカリ』で売れたし、売上金で交換しよう、となってくれれば」(福地氏、以下同)。
2022年10月に出店してから、売り上げはすぐに伸びたという。「他の仮想モールはリピーターが70%程度を占めることが多いが、メルカリShopsの場合は新規がほぼ半数を占めている」のが大きな特徴だ。もちろん、新規の中には他の仮想モールで購入経験のあるユーザーも多く含まれているとみられるが、当初の目的は達しているようだ。
「売上金ありき」の買い方が目立つ
顧客層としては、「もっと若いかと思っていたが、ふたを開けてみれば、40代以降が多い他の仮想モールより、やや平均年齢が低い程度」で、30代後半が目立つという。
一方、購入単価については、Qoo10を除く他の仮想モール店舗に比べると、かなり低くなっている。福地氏は「売上金を使う目的ということもあるのか、安い商品を探しているユーザーが多い傾向にある。他の仮想モールはカニが売れる時期は購入単価1万円を超えることもあるが、メルカリShopsは頑張っても4000円程度。2~3000円という月もあるので、とにかく数をこなすしかないという印象だ」と明かす。
特に、昨年は「訳ありホタテ」が好調に推移。カニに関しても、そのまま1杯買うというよりも、ほぐした身のパック商品などが売れ筋。「他の仮想モールでは売れるのに、メルカリShopsではあまり動かない」という商品も珍しくない。福地氏は「年齢層の問題かと思っていたが、『お金の出どころ』が大きいのではないか」と分析。つまり「売上金ありき」で購入するユーザーが非常に多い、ということだ。
単価が著しく低いということへの社内での評価はどうなのか。「『単価の向上』が議題に挙がることもあるが、それは顧客次第という面が大きい。それよりも『他の仮想モールであまり動いてない商品が売れるのであれば、そちらで伸ばしていけば良いのでは』という雰囲気になってきている」。
「メルカリShops」ならではの顧客傾向
顧客は買い求めやすい「入り口商品」をリピート
フリマアプリ「メルカリ」上のECプラットフォーム「メルカリShops」で売り上げを伸ばしている、「越前かに職人甲羅組」の伝食。単価については他の仮想モールより安く、いわゆる「入り口商品」を購入したユーザーが、そのまま同じ商品のリピーターとなるケースが多いようだ。
通信販売部通販運営企画課・福地志穂美課長代理は「店舗内検索が実装されていないことが、高価格帯商品の購入につながらない一因となっているのではないか」と指摘する。ユーザーは一度購入した商品に「いいね!」を押し、「いいね!」欄より再度購入するという流れ。ただ、店舗内検索がないために、店舗内での回遊が起きにくいわけだ。
店舗内検索に関しては、以前から要望を出しているものの、まだ装備されていないという。福地氏は「店舗のフォロワーに対しては、商品を追加すると通知が行くので、そこから店舗内で他に買いたい商品を見つけてもらえればと思っているが、どこまで効果があるかは分からない。その他の手段はメールマガジンしかないので、他の仮想モールに比べるとアプローチが難しい」と話す。
1日3回のセールで集客
集客の核となるのはアプリの通知だ。タイムセールを行うとフォロワーのスマートフォンに通知が送信されるため、1日3回セールを行うようにしているという。
「セールのスタート時間を変えることで、通知が3回飛ぶ。たとえば、朝はスマホを見る時間が無い人でも、昼休みなら確認できるかもしれない。『ちょうどスマホを見る』タイミングで通知が飛ぶようにしたい」(福地氏、以下同)。もちろん、通知を頻繁に送ることを迷惑に思いブロックするユーザーもいる。「それでも『いつも見ていないとお得な情報を逃す』と感じてもらうことを重視している」。
昨年末からはモール内での検索連動型広告がスタートした。伝食でも出稿はしているものの「他の仮想モールと比較すると、想定していたよりも効果が出ていない」という。
「メルカリShops」の顧客に刺さるヒット商品
メルカリShops店においては、毎週木曜日を「新商品の日」に設定。1~2年続けてきたことで、ユーザーの間でも浸透しており、木曜日に同店をチェックする人も増えているようだ。
カニの爪の根元部分だけを詰めた「ボイルずわいがに爪下棒肉 ポーション」のように、他の仮想モールではあまり売れず、メルカリShopsでは爆発的に売れる商品も出てきている。「他の仮想モールでは見向きもされないが、メルカリではセール時に4000円を切ることもあり良く売れる」。自社で加工している商品だが、昨冬には製造が間に合わなくなることもあったという。

課題と今後の展望
課題はまとめ買いのしにくさ
メルカリShopsにおける優秀店舗を表彰する「メルカリShopsアワード2024」において、総合3位を受賞した同店だが、2024年はやや苦戦したという。「出店店舗が増えてきたので、今までと同じことをやっていては埋もれかねない」。価格競争も激しくなってきており、今まで以上に商品力が重要になってきている。
もう一つ、メルカリShops店において課題となっているのが「まとめ買いに対応しづらいこと」だ。現在、メルカリShopsには買い物カゴ機能がない。そのため、複数商品の購入はもちろん、同一商品をまとめて購入することが難しい。
福地氏は「『同じ商品の2個セット』『3個セット』というように、わざわざセット商品のページを作らなければいけない。ユーザーから『まとめ買いがしたい』という要望があるたびに、商品ページを作っているので非常に手間がかかる」と明かす。
水産加工ができる強みを生かしたMDを構想
他にも、商品説明欄での動画活用や、クーポン発行を通知した際に「クーポン一覧」ではなく、クーポン対象商品のページに遷移してほしい、といった要望を出しているという。
福地氏は今後のメルカリShops店の運営方針について、「タイムセールの通知は他店に真似をされているので、時間を変えたり回数を増やしたり、工夫をしていきたい」と話す。また、社内で水産加工ができる強みを活かし、「カニの爪下ポーション」のように「メルカリ」で売れる商品を開発していきたい考えだ。
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