鳥栖 剛[執筆] 7:30

越境ECサイト「WAFUU.COM」を運営するクレスティアが発表した、越境ECサイトの「生成AI経由の越境EC購買動向」調査結果によると、生成AI経由で来訪した顧客のカート追加率は全体平均より38.5%高く、チェックアウト到達率も22.6%上回った。「明確な購買意図を持つ訪問者」が多い傾向のほか、平均セッション時間は114秒で全体平均の91秒を25.8%上回っていた。

「WAFUU.COM」は日本の流通商品を世界100か国以上・21言語で展開する越境ECサイト。独自仕入れによるセレクトショップ形式で運営している。

越境ECサイト「WAFUU.COM」を運営するクレスティアが発表した、越境ECサイトの「生成AI経由の越境EC購買動向」調査結果 越境EC「WAFUU.COM」のトップ画面
越境EC「WAFUU.COM」のトップ画面

生成AIからの流入

「ChatGPT」「Gemini」「Claude」「Perplexity」などの対話型AIプラットフォームからの流入が、2025年11月は同年1月比で約25倍に増加。2024年にはほぼ存在しなかった流入チャネルが、新たな重要顧客接点として確立されたとしている。

AI経由のトラフィックは情報検索だけではなく、実質的な販売経路として機能。特に2025年後半には、月次ベースで安定的な購買が継続しており、消費者の購買行動におけるAIの役割が急速に拡大したという。

生成AI経由による顧客層

生成AI経由の顧客層のカート追加率は全体平均より38.5%高く、チェックアウト到達率も22.6%上回るなど、「明確な購買意図を持つ訪問者」が多い傾向があった。

越境ECサイト「WAFUU.COM」を運営するクレスティアが発表した、越境ECサイトの「生成AI経由の越境EC購買動向」調査結果
AI経由の購買ファネル構造

また、平均セッション時間は114秒で、全体平均の91秒を25.8%上回った。サイト内で商品を比較検討する行動が顕著で、AIとの対話を通じて事前に情報を収集した上で訪問、詳細確認後に購入するという購買パターンが出現していると分析している。

生成AI経由のアクセス環境

アクセス環境の分析ではモバイル端末からのセッションが全体の95%を占めた。AI経由の購買が主にスマートフォンを通じて行われていることが明らかになった。「ChatGPT」など対話型AIの多くがモバイル利用を前提としたUIで普及していることに起因しており、「スマートフォン中心の新しい購買行動」として定着しつつあるという。

越境ECサイト「WAFUU.COM」を運営するクレスティアが発表した、越境ECサイトの「生成AI経由の越境EC購買動向」調査結果
デバイスタイプ別セッション比率

生成AI経由とGoogle経由の特長

AI経由とGoogle経由の購買カテゴリを比較したところ、明確な違いがあるという。Google経由では特定ブランドや型番を指定する「ゲーム」「腕時計」などが上位に並んだ一方、AI経由では「どの製品を選ぶべきか」といったオープンな相談から購買が始まるケースが多かった。

構成比を見てみると、理美容家電・キッチン用品が17.5%、健康食品・サプリメントが9.7%、美容・パーソナルケアが9.7%など、詳細情報を必要とするカテゴリが上位を占めた。AIが商品選択のアドバイザーとして機能することで、新たな購買プロセスを生み出しているという。

生成AI経由による地域性

AI経由による購買は世界947都市・地域からアクセスが確認され、特定地域に限定されないグローバルなトレンドとして拡大しているようだ。アクセスが多かったのは、トルコ(イスタンブール)、イギリス(ロンドン圏)、韓国(ソウル)、ベトナム(ホーチミン)、日本(東京)などアジア太平洋地域が中心だった

「Instant Checkout」機能の影響

OpenAIが「ChatGPT」内で直接商品を購入できる「Instant Checkout」機能を2025年9月に米国で開始し、現在は「Etsy」のセラーが対応。「WAFUU.COM」が利用する「Shopify」も、今後100万以上の加盟店への展開が予定されている。さらに10月には、PayPalとの提携で2026年から数千万の加盟店が「ChatGPT」上で販売できるようになると発表されている。

AIプラットフォームは現在、消費者を外部ECサイトに誘導する「紹介者」としての役割を担っているが、「Instant Checkout」の普及でAI自体が完結した購買チャネルへと進化する可能性があると指摘している。

「ChatGPT」の週間アクティブユーザーは7億人を超え、Google検索に匹敵する巨大な顧客接点になっている。特に越境EC事業者にとって、次のような大きな変化が予測されるという。

購買プロセスの短縮化

AI内での商品発見から購入完了までがシームレスになり、従来の「検索→サイト訪問→カート→決済」という段階的なプロセスが大幅に簡略化される

商品情報の最適化

従来のSEOに加え、AIが理解しやすい構造化された商品情報の整備が競争優位の源泉となる

新規市場へのアクセス

言語や決済の障壁が低減されることで、これまでリーチできなかった地域の顧客獲得が加速する可能性がある

越境ECサイト「WAFUU.COM」を運営するクレスティアが発表した、越境ECサイトの「生成AI経由の越境EC購買動向」調査結果
ChatGPT内購買インターフェースの例

2024年末まではごくわずかだったAI経由の購買が、わずか11か月で主要なチャネルへと成長したことに驚いている。今回の調査結果は、生成AIが越境EC市場における新たな購買インフラとして定着しつつあることを示唆している。当社は今後も、AI時代における最適な顧客体験の提供を目指し、サービスの改善と市場分析を継続していく。(クレスティア 深田秀正社長)

調査概要

  • 調査名:WAFUU.COM「生成AI経由の越境EC購買動向」調査
  • 期間:2024年1月〜2025年11月(11か月)
  • 対象:「WAFUU.COM」の越境ECサイト利用データ(セッション/カート追加/購入完了)
  • 定義:「AI経由」は、ChatGPT/Gemini/Claude/PerplexityなどのAIプラットフォームのトラフィック・購入を指す。
  • 指標:購入完了件数(Orders)、Add to Cart率、平均注文額など
  • 備考:ボット・スパムなどの異常値は除外。
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